平安中期に作られた、47字の仮名を全て用いる七五調の手習い歌のことです。
その内容は、涅槃経にある「諸行無常」「是生滅法」「生滅滅已」「寂滅為楽」を意訳したものといわれています。
因みに、平安初期にはいろは歌に先行して「天地の詞」「たゐにの歌」なども作られています。
明治時代には旧来のいろは歌に代わる「新いろは歌」として、「とりな歌」という作品もありました。
【天地の詞】
あめつちほしそらやまかわみねたにくもきりむろこけひといぬうへすゑゆわさるおふせいえのえをなれゐて
(天、土、星、空、山、川、峰、谷、雲、霧、室、苔、人、犬、上、末、硫黄[ゆわ]、猿、生ふせよ、榎[え]の枝を、慣れ居て)
【たゐにの歌】
たゐにいでなつむわれをぞきみめすとあさりおひゆくやましろのうちゑへるこらもはほせよえふねかけぬ
[大為爾伊天奈徒武和礼遠曾支美女須土安佐利於比由久也末之呂乃宇知恵倍留古良毛波保世与衣不禰加計奴]
(田居に出て菜摘む我をぞ君召すと 求食[あさ]り追ひ行く山城の 打酔へる子ら藻は干せよ え舟繋[か]けぬ)
【とりな歌】
とりなくこゑすゆめさませみよあけわたるひんかしをそらいろはえておきつへにほふねむれゐぬもやのうち
(鳥鳴く声す 夢覚ませ 見よ明けわたる 東を 空色栄えて 沖つ辺に 帆船群れゐぬ 靄の中)
色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず
伊呂波骨牌(歌留多)とも。カルタの一種。
いろは47字+「京」を頭字とする語呂のよい短句形のたとえ・ことわざを集めたもので、ことわざを記した字札(読み札)と、それを絵解きした絵札各48枚の計96枚からなります。
18世紀後半の上方に起こり、続いて江戸でも作られたとされ、双方の文言に差異があります。
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江戸/上方/尾張
『広辞苑』第五版(岩波書店)、『岩波 いろはカルタ辞典』)(岩波書店)