いろはかるた(上方系)

【い】
一寸先は闇:
ちょっと先のことも全く予知できないことのたとえ。「一寸先は闇の夜」ともいう。
【ろ】
論語読みの論語知らず:
書物の上のことを理解するばかりで、これを実行できない者にいう。
【は】
針の穴(孔)から天覗く:
狭い見識を以て大きい物事に臨むたとえ。「葦の髄から天井のぞく」。
【に】
二階から目薬:
2階にいる人が階下の人に目薬をさすように、思うように届かないこと。効果のおぼつかないこと、迂遠なことのたとえ。「天井から目薬」とも。
【ほ】
仏の顔も三度:
いかに温和で慈悲深い人でも、たびたび無法を加えられれば、しまいには怒り出すということ。
【へ】
下手の長談義:
話下手の者にかぎって話が長くなり、はた迷惑なこと。
【と】
豆腐に鎹:
意見をしても、少しの手応えもなく、効き目もないこと。「糠に釘」。
【ち】
地獄の沙汰も金次第:
地獄の裁判でも金で自由にできるという、金力万能をいう諺。
【り】
綸言汗の如し:
一度口に出した君主の言は、汗が再び体内に戻らないように、取り消すことができない。
【ぬ】
糠に釘:
手応えなく効き目のないことのたとえ。意見しても効果のないことなどにいう。
【る】
類をもって集まる:
善悪に関わらず、似通った者同士が自然に集まる。
【を】
鬼も十八:
どんな娘でも年頃には女らしい魅力が出るという意。続けて、「番茶も出花(端)」「蛇も二十歳」などともいう。
【わ】
笑う門には福来たる:
いつもにこにこしていて笑いが満ちている人の家には自然に福運が巡って来る。
【か】
蛙の面に水:
(厚かましくして)どんな仕打ちにあっても平気でいるさま。しゃあしゃあとしていること。「蛙の面に小便」ともいう。
【よ】
夜目遠目笠のうち:
夜見たのと、遠方から見たのと、笠をかぶっているのをのぞき見たのとは、女の容貌が実際よりも美しく見えるものである。
【た】
立板に水:
弁舌がすらすらとして淀みのないさま。(⇔横板に雨垂れ)
【れ】
連木で腹を切る:
到底できはしないことのたとえ。杓子で腹を切る。
「連木」は擂(す)り粉木(こぎ)のこと。
【そ】
袖振(摺)り合うも他(多)生の縁:
(振り合うは、互いに触れる、または互いに振るの意)道行く知らぬ人と袖が振り合うことさえ宿縁による。すなわち、ちょっとした出来事もすべて宿世の因縁によるという意。
「袖の振り合わせも他生の縁」ともいう。
【つ】
月夜に釜を抜く:
明るい月夜に釜を盗まれる意から、(1)ひどく油断することのたとえ。
(2)油断してひどい目に遭うことのたとえ。
「月夜に釜を抜かれる」、「月夜に釜」ともいう。
【ね】
猫に小判:
貴重なものを与えても何の反応もないことのたとえ。転じて、価値のあるものでも持つ人によって何の役にも立たないことにいう。「豚に真珠」。
【な】
済す時の閻魔顔:
借りる時はにこにこして借りても、返済する時には不愉快な顔つきをする人情をいう。
困った時に助けられた恩義を忘れ去った態度を、その時の相手に示すことのたとえ。
「借る時の地蔵顔(恵比寿顔)、済す時の閻魔顔」ともいう。
【ら】
来年のことを言えば鬼が笑う:
明日のことさえ分からないのに、来年のことなどとても予測できない意をいう語。
【む】
馬の耳に風:
(馬は耳に風を受けても感じないことから)人の意見に少しも感ぜず、聞き流していることのたとえ。
また、何も感じず、効果のないことのたとえ。馬耳東風。
【う】
氏より育ち:
氏素性の良さより子供から大人になる間の環境・教育が人柄に影響するところが多いことをいう。
【ゐ】
鰯の頭も信心から:
鰯の頭のようなつまらないものでも、信仰すると、ひどくありがたく思える。
価値のないつまらないものでも、信じる人にはありがたいものになるということ。
また、頑迷にそのように信じる人をからかって言う。
【の】
鑿といえば槌:
万事によく気が回り、即座の対応ができることのたとえ。
【お】
負うた子に教えられ浅瀬を渡る:
時には、自分よりも年下の者や未熟な者から教えられることがあることのたとえ。
【く】
臭い物に蠅がたかる:
醜悪なものが類をもって集まるたとえ。
【や】
闇に鉄砲:
当てずっぽうのたとえ。また、向こうみずに事をやることのたとえ。
「暗闇の鉄砲」「闇夜に礫(つぶて)」「闇夜の鉄砲」「暗がりに鉄砲打つ」などいくつかの表現がある。
【ま】
蒔かぬ種は生えぬ:
原因がないのに結果の生ずるはずがない。何もせずに好結果を期待しても無理である。
【け】
下駄と焼味噌:
(味噌を板につけて焼いたものと下駄の、形だけが似ているところから)外形が似て実質の全く相異なることのたとえ。
【ふ】
武士は食わねど高楊枝:
武士はものを食べなくても、食べたようなふりをして楊枝を使って空腹を人に見せない。武士の清貧に安んずること、気位の高いことにいう。
【こ】
これに懲りよ道才坊:
これに懲りて二度とするなという場合に、口調よく言う語。「道才坊」は語呂合わせに添えたもの。
【え】
縁の下の力持ち:
人に知られずに、陰で努力・苦労していること。また、その人。「縁の下の舞い」ともいう。
【て】
寺から里へ:
檀家から寺に物を贈るのが普通であるのに、寺から檀家へ物を贈る意。物事の逆さまなことをいう。
【あ】
足元(下)から鳥が立つ:
(1)身近な所で突然、意外なことが起るさまにいう。
(2)急に思い立ったように物事を始める。
【さ】
竿の先に鈴:
やかましいこと、口数の多いことの形容。
【き】
義理と褌欠かされぬ:
どんな場合にも義理を欠いてはならないという意。男が常にしめなくてはならない褌を引き合いに出して強調した語。「義理と褌」ともいう。
【ゆ】
幽霊の浜風:
やつれきり、青ざめて元気のない状態の意。
【め】
【み】
身は身で通るはだかん坊:
(1)身分や貧富の差はあっても、人はそれぞれの身の程に応じて生きてゆくものだということ。
(2)人は自分本位に暮らすものだということ。
「身は身で通る」ともいう。
【し】
吝ん坊の柿の種:
けちな人は、何の値打ちもないものまでも惜しむということのたとえ。
【ゑ】
縁の下の舞い:
他人のためにばかり苦労して、自分は世間には認められないこと。無駄な骨折りのこと。
「縁の下の力持ち」ともいう。
【ひ】
瓢箪から駒:
(1)意外な所から意外なものの現れることのたとえ。ふざけ半分の事柄が事実として実現してしまうことなどにいう。
(2)道理の上から、あるはずのないことのたとえ。
「瓢箪から駒が出る」ともいう。
【も】
餅は餅屋:
物事にはそれぞれの専門家があるということ。
物事は、それぞれの専門家に任せるのがよいということのたとえ。
「餅屋は餅屋」ともいう。
【せ】
栴檀は双葉より芳し:
栴檀は発芽の頃から早くも香気があるように、大成する人は子供の時から並はずれて優れている。
「栴檀は双葉より」ともいう。
【す】
雀百まで踊り忘れず:
幼い時からの習慣は、年老いても抜けきれない。
特に、年をとっても道楽のたぐいがなかなかおさまらないことに用いられる。
【京】
京に田舎あり:
(1)賑やかで雅な都の中にも、どこかのどかで田舎風の場所や風俗があるということ。
(2)よいところにも、一部にはよくないところがあるという意。

参考:『広辞苑第五版』(岩波書店)、時田昌瑞『岩波 いろはカルタ辞典』(岩波書店、2004年)