女性のこと

【平安時代】
■貴族の女性は基本的に「いざり歩き」。
 なので、中古の文学作品(『源氏物語』等)の中で女性が「立つ」という描写があった場合、異常事態が起きたことを意味する。
■美人の条件は「色が白い」こと(これは後世でも変わらず)。
 そのため、白粉を塗り、色が白くなった範囲が広い(要するに顔が大きめの)女性が平安美人(※ 平安時代は飢饉なども頻繁に起きた時代なので、栄養状態の良い=ふっくらとした女性が好まれたのだともいわれる)。
■貴族の女性は、成人すれば眉を抜き、お歯黒(鉄漿)をする。
 眉剃りもお歯黒もしていない貴族の女性に対する評価は『虫めづる姫君』に見られる。

【江戸時代】
■『守貞謾稿』によれば、江戸・京都・大坂では未婚女性は島田髷、既婚女性は両輪(京坂)と丸髷(江戸)。
 丸髷を結い、お歯黒をしても眉を剃っていない女性は「半元服」(京坂では「かねつけ」。「かね」は鉄漿、お歯黒のこと)。江戸では丸髷にして眉を剃り、お歯黒をつけることを「元服」といい、京坂では「かををなおす(顔を直す)」という。
 京坂では新婦はお歯黒だけして、眉を剃らないが、大抵は妊娠すると眉を剃る。まだ嫁いでいなくても、20数歳になればお歯黒をし、眉を剃る。
 京坂では嫁げば必ずお歯黒をするが、江戸では15~17歳の新婦であればお歯黒をしない。京坂同様、嫁いでいなくても女性はお歯黒をし、眉を剃るが、京坂よりも若干早く18~19歳でお歯黒をし、眉を剃る。

 続きます。

 喜田川守貞 著・宇佐美英機校訂『近世風俗志(二)』(岩波書店)を参考にしています。