江戸時代の流行色

 江戸時代は、幕府によって高価な織物・染め物は禁止されていたので、地味な色(鼠色、茶色)に流行色が多くあったようです(「四十八茶百鼠」などと言われるそうです)。

歌舞伎から生まれた流行色

 歌舞伎役者に愛用された色は、役者の名前を冠して流行色となるものもありました(※)。江戸歌舞伎役者芝翫(=3代目中村歌右衛門)が好んだ「芝翫茶」や、市川団十郎が狂言に用いたとされる「団十郎茶」、瀬川菊之丞(路考)が好んだ「路考茶」などがその例です。役者名ではありませんが、歌舞伎『助六』の主人公・助六が身に付けている江戸紫は、当時江戸っ子の色とされており、助六の江戸っ子気質を表しているといえるでしょう。

※…色の他に、役者が用いることで流行した紋様もありました。芝翫が用いた「芝翫縞」(四本縞の間に繋ぎを置いて「四輪(芝翫)」と読ませる)、佐野川市松が用いた「市松模様」、5代目岩井半四郎が用いた「半四郎鹿子」(浅葱の麻の葉鹿子)などがその例です。

芝翫茶 団十郎茶 路考茶 江戸紫

参考

 『新世紀ビジュアル大辞典』(学習研究社)、『日本・中国の紋様事典』(視覚デザイン研究所)、『色々な色』(光琳社出版)、『すぐわかる日本の伝統色』(東京美術)