仏様のこと

仏像について

 仏教の開祖がお釈迦様であることは広く知られています。
 その仏教ではもともと偶像を崇拝する習慣はなく、仏足石(仏の足跡)や輪宝が崇拝の対象とされましたが、紀元1世紀頃から生前のお釈迦様に似せた像が造られるようになったといいます。
 仏像が造られ始めたのはパキスタンにあったガンダーラで、ギリシャ美術の影響が強く受けているとされます。

仏の分類

如  来

 悟りを開いた者のことを、「Buddha(覚者)」の音訳で「仏陀」または「仏」と呼びます。「如来」も同じく悟りを開いた者を指します(如(真如)から来生した者の意)。
 歴史上に実在した如来は釈迦如来のみですが、仏教の教義が多様化するにつれ、多くの如来が生み出されました。釈迦如来以前にも悟りを開いた者がいて、釈迦如来はその教えを受け継いだのだという考えから生まれたのが過去七仏。これに対し、未来において如来となることが約束されている(未来仏)が弥勒如来です(なお、弥勒は現在兜率天において修行中であることから、修行中の菩薩であるとされ、弥勒菩薩とも呼ばれます)。また、その考え方が発展して、過去・現在・未来それぞれに千の仏が存在するという三世三千仏という考えも生まれました。
 さらに、より具体的な性格をもつ如来も生み出されました。衆生を極楽へ導く阿弥陀如来、衆生を病から救う薬師如来、宇宙の真理を具体化した毘盧遮那如来大日如来などがそうです。
 これらの如来はそれぞれ浄土(仏国土)を持っています。有名な西方の極楽浄土は阿弥陀如来の浄土で、それに対応する東方が薬師如来の浄瑠璃浄土です。
 代表的な如来は釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、大日如来。

菩  薩

 未来において悟りを開き、如来となるであろう弥勒は、現在は悟りを開くために修行しているのだと考えられています。その弥勒と同じように、いずれ如来となることが約束されている修行者として考えられたのが菩薩です。
 如来が、悟りを開いた後のお釈迦様と同じ、法衣のみの質素な服装なのに対し(※大日如来は、他の如来と異なる存在であることを示すため、装飾品を身につけています)、菩薩は釈迦族の王子であった修行中のお釈迦様の姿に似せているので、装飾品を身につけた姿をしています。
 多くの菩薩が如来につき従って修行をしているとされていますが、とくに高位の菩薩は補処(ふしょ。一生補処とも。この一生の後には如来となるの意)の菩薩と呼ばれ、如来と一緒に三尊像とされていることもあります。
 釈迦如来は文殊菩薩普賢菩薩、薬師如来は日光菩薩月光菩薩、阿弥陀如来は勢至菩薩観音菩薩が、それぞれ補処の菩薩になります。なお、弥勒菩薩はすでに如来となることが決まっていることから、一生補処とはとくに弥勒菩薩を指すこともあります。
 代表的な菩薩は弥勒菩薩、観音菩薩、地蔵菩薩など。

明  王

 密教特有の尊像で、大日如来の一つの表現とされています。
 明王は如来の命を受けて魔障を調伏するために現れるとされていることから、一般に恐ろしい外見の忿怒形で造られ(孔雀明用は例外的に菩薩形で造られています)、さまざまな武器を持ち、火焔光を背負っています。
 代表的な明王には五大明王(不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王)や、愛染明王などがあります。

 もとはバラモン教などの異教の神々が仏教に取り入れられ、仏法を守護するとされたのが天です。
 仏教尊像の中では最も位が低く、人間に最も近い身近な存在でもありますが、日本で特有の信仰を得ている天もあります。
 異教の神々が取り込まれているので、形はさまざま。有名な天には梵天、帝釈天、四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)など。

……続きます……

参考

田中義恭・星山晋也著『目でみる仏像 完全普及版』(株式会社東京美術、2000年)